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阪大生の学習時間。少ない?多い?阪大生のせい? {SERU・学生生活調査の結果から}

2020.11.24
 HERレポート
高等教育・入試研究開発センターの和嶋です。

ワニ博士のファンなので、ワニ博士マスクを独自で発注してみました。非公認グッズですが、結構評判よいです。

阪大生の皆さんにご協力いただいたアンケートや学内にある教育に関するデータについて、その分析結果をご紹介するのが、「Handai Education Review レポート(HER レポート)」です。
これまで、新入生が阪大に期待していることの分析を紹介しました。今回は少し趣向を変えて、阪大生の学習時間についてまとめてみたいと思います。

学習時間、と聞いて心臓がキュッとなった阪大生の皆さん……にも安心・納得いただける内容かと思います!

大阪大学では、「研究大学における”学び”の調査」という、国際的な研究大学が共同で実施している学生調査に参加しています。英語名称はSERU(=Student Experience in the Research University)。サルじゃありません。
SERUは、研究大学でも研究ばかりを優先して行うのではなく、教育もしっかり行っているか、学生がちゃんと大学教育を経験しているかを調査するアンケートになっています。 その中に、日々の学習時間に関する項目があります。皆さんにその結果を分かりやすく伝えるためにまとめた図がこちら! 中央の青い列が阪大です。
SERUの結果をお知らせするために作ったポスター(PDF)から抜粋です。ちょっと古いです。が、今年度末、SERU実施予定です! その際はぜひ皆さんの最新の学習時間、教えてください。
阪大生の1週間の学習時間は平均29.0時間。授業・演習など授業内での学習時間は週18.4時間、予習や復習など授業外での学習時間は週10.6時間行っており、授業内での学習時間が多いという傾向でした。
左のオレンジ色の列、アメリカの研究大学の学生は、1週間の学習時間は平均29.7時間と阪大生とほぼ変わりませんでしたが、授業内での学習は週15.5時間、授業外での学習は週14.2時間となっており、授業内と授業外の学習時間がほぼ半々であることがわかります。
また、右の緑色の列に示されている中国の研究大学の学生は授業内での学習は週18.7時間、授業外での学習は週14.0時間と、阪大生と同じように、授業内での学習時間が多い傾向があるようです。

研究大学の学生は、どこでもだいたい30時間、勉強しているようです。個人差はもちろん、あると思いますが。

▲アメリカの大学
▲大阪大学
▲中国の大学
阪大生と中国の大学の学生は、1年生の時には授業内での学習時間が多く授業外での学習時間が少ないですが、4年生に向かって、授業内での学習時間が減り授業外での学習時間が増えてきます。
一方で、アメリカの大学の学生は、1年生から4年生まで、授業内と授業外での学習時間が半々のままとなっています。
新聞やニュースなどを見ていると、「日本の大学生は勉強しない!」という記事に出会うことがあります。しかし、今回紹介したSERUの結果から見ると、授業内、授業外を合わせれば、阪大生はアメリカの研究大学の学生と同じくらいの学習時間となっています。阪大生は胸を張って「勉強している!」と反論できるのではないでしょうか。
一方で、「授業外の学習時間が少ないじゃないか!」という批判が上がるかもしれません。しかし、その責任は、学生だけにあるのでしょうか?

阪大生が学習をサボっているから、ではない、と私は思います。

ほとんどの日本の大学の学部では、4年生(もしくは3年生)になると研究室に配属されて、自身の研究を行い卒業論文を執筆し、論文の審査を受けて最後の単位が認定されて卒業する、という流れになっています。
4年生になったら、自身の研究に邁進することになり、授業を受ける暇がなくなります。また、日本の就活事情では、インターンを含め、3年生からその活動が始まるようです。
実際に阪大生も、2018年の卒業時アンケートによれば、学部を卒業して就職した学生の74%が3年生から進学・就職の準備や対策を始めていると答えています。
したがって、現在の大学生が置かれている状況では、3~4年生は就活や研究で忙しくなるので1~2年生で単位をたくさん取る必要がある、それゆえ、授業内学習時間が多くなり、授業外学習時間が少なくなってしまう、ということになると思います。
加えて、アルバイトの時間も必要ですし、情報収集やネットワーク形成のためのサークル活動の時間も必要になります。
2017年に実施した第24回大阪大学学生生活調査によれば、阪大生の1・2年生の63.7%がアルバイトをしており、その中で35.1%が週5~10時間、22.0%が週10~15時間、13.8%が週15~20時間のアルバイトをしています。
また、阪大生の1・2年生の68.3%がサークル活動を行っており、その中で33.3%が週2~5時間、26.1%が週5~10時間、14.2%が週10~15時間のサークル活動を行っています。

ちなみに同じ調査によると、就職情報の入手経路は、1位インターネットの情報37.7%、2位先輩・知人25.80%、3位その他20.30%となっており、就職情報を得るということでも、サークル活動は重要な役割を果たしている可能性があります。

これらを考え合わせると、日本の大学生が置かれている状況では、授業外の学習時間を増やすというのは大変難しいのではないかと思います。「授業外の学習時間が少ないじゃないか!」という批判は、大学生本人ではなく、日本の教育制度、大学(阪大も)、就職制度に向けられるべきなのかもしれません。

とはいえ「だからトータル学習0時間です」とはいかないわけで。阪大生の皆さん一人ひとりは、それぞれの学習を進めていきましょう。限られた時間のやりくり、重要です。

十分に授業外学習時間が確保できない状況で、学習に関する様々な問題を抱えている方もいると思います。実は、大阪大学にはガイダンス室という所があり、学内の様々な部署や教員と連携しながら、皆さんの学習サポートを行うサービスが展開されています。
附属図書館でのラーニング・サポートデスクでは、大学院生TA(ラーニング・サポーター:LS)が学習に関する相談に乗ってくれたりします。学習でお悩みの方、ぜひこのサービスを利用して、充実した学習を進めていってもらえれば、と思っています。
Handai Education Review
公式HP
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