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「なんぼでも遊んでや!」石橋商店街・タローパン店主の堤さんに、阪大生と商店街の友情&愛情の真相を直撃取材してみた。

2019.04.22
 😳mappa!
豊中キャンパス最寄りの「阪急石橋駅」に直結している「石橋商店街」。阪大へ通うほとんどの学生が通る商店街です。お世話になっている石橋暮らしの阪大生も多いよう。実は、阪大と石橋商店街は、一緒にイベントを開催したり、商店街でゼミの調査をしたり、ただ一緒に遊んでみたりと、深い関わりがあるんです。今回は、商店街の一角にある「タローパン」店主の堤さんにインタビュー。実は堤さんと仲が良く、つながりのある阪大生はなんと150人以上もいるんだとか!なんでそんなに阪大生と仲が良いの?阪大生とどんなことをしているの?堤さんから阪大生へのメッセージも語ってもらいました。

プロフィール

堤 洋一(つつみ よういち)

Bakery & Cafe タローパン 店主、石橋商業活性化協議会 理事長、石橋商店会 元会長。大阪大学経済学部松村ゼミ 特別顧問。
1962年石橋生まれ、石橋育ち。石橋商店街と阪大をつなぐキーパーソン。


きっかけはゼミの取材。このチャンスを逃したらアカンと思って、「ゑびす男選び」を提案したんです。

— こんにちは!今日はよろしくお願いします。パンのいい香りがしますね〜!
ようこそいらっしゃい!ちょっと今日、声がまったく出なくてカスカスなんですよ。いつもはもっといい声なんですけどね(笑)。ほんまごめんやけど、よろしくお願いします!
タローパン店主の堤さん。インタビュー当日、喉の調子が悪いとのことで、ボイスレコーダーを必死に近づけて取材しました。そのため、ボイスレコーダーが写っていますが悪しからず!
— 大丈夫ですか!?頑張って聞き取りますので、ご無理なさらないでくださいね(涙)。まずは、タローパンと堤さんのことをお伺いしたいんですけども。
タローパンは1929年に開業しました。当時からずっと、この石橋でお店をやってきて、ちょうど90年になります。僕は3代目の店主です。それと僕は、NPO法人石橋商業活性化協議会の理事長で、石橋商店会の元会長も務めていました。
— すごい!老舗のパン屋さんの店主もされながら、商店街全体も統括されているんですね。ちなみに、堤さんは阪大出身なんですか?
違いますよ。昔から石橋にいたから、僕も将来は阪大に通うんやろうなと思ってたんですけど、中学2年生の時くらいに、それは無理やと知りましたね(笑)。
— なるほど(笑)。堤さんは阪大と深い関わりがあると聞いたんですが、元阪大生でも、先生でもないのに、何がきっかけだったんですか?
今から13~14年前に、経済学部の松村ゼミから取材をさせてほしいって依頼があったんですよ。それが、商店街と阪大の付き合いが深まるきっかけでした。ちょうどその頃、石橋商店街としても、阪大生の皆さんに商店街のことをもっと知ってもらいたいと思っていたから、阪大とつながりたかったんですけど、きっかけがなくて。だから、松村ゼミから取材された時、「このチャンスを逃したらアカン!」と思いましたね(笑)。そこで、「阪大と商店街がコラボしたイベントをやりませんか?」って提案しました。
— どんなイベントですか?
阪大といえば、阪大坂でしょ。あの坂を走ったらおもしろいかなと思って、「阪大坂を走るイベントやりましょう」と言ったんですよ。そしたら、「やりましょう」と返事をもらって。今も、『ゑびす男選び@阪大坂』という名前で毎年1月に開催しています。
— それを13~14年前に提案されて、今も続いているんですか?
そう。まさか僕もこんなに長く続くと思ってなかったですよ。「坂走ってみたらどう?」って言っただけやから。今は、商店街のお店にも協力してもらって、炊き出しをしたり、賞品をプレゼントしたりと、正月の恒例イベントになっています。

新歓、映画祭の審査員、商店街で文化祭。阪大と商店街でコラボして、いろんな活動をしています。

松村ゼミが取材に来てくれたのとほぼ同じ時期に、「石橋×阪大」っていう阪大のサークルの学生さんも取材で来てくれたんですよ。その時は、「石橋に学生の居場所をつくりたい」っていう相談も兼ねて来てくれたんやけど、まだアイデアも固まってなかった。
— 商店街としても阪大とつながりたいと思っていたタイミングの時に、学生さんが声をかけてくれたんですね。
そうなんですよ。それで、商店会の会議でも議論して、本格的に阪大と一緒にプロジェクトをしていこうと決まったんです。
— それからは、具体的にどんな取り組みをされているんですか?
例えば、『おはこ文化祭』。これは「阪大の学祭を石橋商店街で開催する」っていう秋のお祭りで、阪大のサークルや団体の皆さんが、屋台や催し物をしてくれています。
ほかには、いろんなサークルや団体とつながって、イベントのサポートなんかもさせてもらっています。例えば、サッカー部の新歓では商店街のお餅屋さんと一緒に餅つき大会を開いたりとか、アカペラサークルの学生さんに歌を教えてもらって、商店街のイベントでアカペラ歌うとか。
— アカペラ!?
そうなんですよ。商店街の3名、アカペラサークルの3名で、今度一緒にアカペラを披露するんです。今日はこんな声ですけどね、実はけっこう歌上手いんですよ!阪大の学祭で、のど自慢大会にも出たことあるし。
— 阪大ののど自慢大会に!?
2回ほどステージで歌いました。「ハンダイ映画祭」の審査員をしたこともありますよ。学生の皆に商店街へ来てもらうばっかりは嫌だったから、僕ら商店街の人も、阪大のイベントには積極的に参加するようにしています。
— すごく多彩ですね!以前と比べると、阪大とのつながりも深まったのではないですか?
はい。学生だけでなく先生方とも親しくなれましたし、商店街のイベントを手伝ってくれるのも、とてもありがたいです。

イベントが無くても阪大生と仲良し。ドライブもカラオケも、誘われたら何でもやります。阪大生も「こんなに遊べる商店街は無い!」

— サークルや団体の催しだけでなく、プライベートでも阪大生と仲が良いと聞いたんですが。
仲良いというか、僕が遊んでもらってるだけです(笑)。
— いやいや(笑)。堤さんは目上の方ですし。
カラオケもオールで誘われるし、ボウリング大会もやりますよ。昨日は、阪大生達と一緒に淡路島へドライブに行ってました。
— ええ!?思っていた以上に、本気の遊びでした(笑)(声を枯らすくらい楽しかったんですね…)。
はい。誘ってもらえるんで、パン屋の仕事をしながらでも遊びにいきます。カラオケは最近の流行りを調べて、ONE OK ROCKとか、米津玄師とか歌ってみたりね。淡路島はドライバーとしてずっと運転しましたし、ボウリング大会は阪大の先生も商店街の人も集まって、80人くらいで盛大にやりました。大会の後は、タローパンで打ち上げもして。楽しいですよ。
— 堤さんが、パン屋の店主というよりも、皆のお父さん?友達?に見えてきました…(笑)。
皆、僕がパン屋やってことを忘れてるんちゃうかな(笑)。
— では、ここで阪大生の皆さんからも、意見をお伺いしたいと思います!
集まってくれたのは、経済学部松村ゼミの皆さん。
— 松村ゼミの皆さん、お集まりいただきありがとうございます!皆さんは、ゼミ活動を通して堤さんや石橋商店街と関わりがあるとのことなんですが、堤さんってどんな印象ですか?
Aさん「ゼミに入る時にゼミのホームページをみたら、“特別顧問 堤洋一”って書いてあって、最初は誰?って思いました。めっちゃすごい人かなと思っていたけど、会ってみたら、僕らと同じレベル感くらいのおもしろいおじさんでした(笑)。」

堤さん「あれは、いつの間にか就任しててん(笑)。」

Bさん「ゼミの時に、石橋商店街で実験をすることがあるんですけど、そんな時はいつも堤さんに相談しています。すると堤さんが商店街の皆さんに声かけをしてくださるので、とても助かっているんです。堤さんは商店街の窓口みたいな感じですね。」

堤さん「うん、花まるの答えや!」

一同「爆笑」
Aさん「お父さんくらいの年齢だけど、友達みたいな感覚ですね(笑)。パンを焼くために早起きしてるはずなのに、遊びに誘ったら付き合ってくれる。異常なくらい元気!しかも、どの学生よりも堤さんが一番ボルダリング上手だし。」

Cさん「“タロ友”っていって、堤さんがつくったLINEグループがあるんですよ。僕らも参加してるんですけど、パンが売れ残った日にはLINEで教えてくれたり、阪大生がイベント告知をしていたりして、阪大生どうしのつながりも広がりました!」
“タロ友”のメンバーはなんと157人!
—すごい、堤さんを中心に、いろんなつながりがあるんですね!商店街についてはどうですか?
Bさん「ゼミがきっかけで堤さんや商店街と深く関わるようになってから、商店街に興味を持ちました。もっと開拓したいなって思います。」

Aさん「僕は愛知出身なんですけど、石橋商店街の活気に驚きました。初めての一人暮らしで不安だったけど、ここは人と人の距離が近くて安心です。」

Dさん「とても個人的な話なんですけど、家の電球が切れてしまった時に、品番がよく分からなくて商店街にある電気屋さんに行ったんです。そしたら、丁寧に製品を教えてくれて、とても助かりました。」

Cさん「阪大生と分かるや、モーニングにでっかいサラダをサービスしてくれる喫茶店とかもあるよね。僕、大阪の別の商店街でも話題になっていた、ポスタープロジェクトを石橋商店街でやりたいと思ってます。店主さんの顔写真を撮って、キャッチコピーを書いたポスターを作成するんです。過去にも石橋商店街でやったことがあるんですけど、もう一度。」

堤さん「いいね、やろう!」

Cさん「堤さんOK、出た!これでもう安心(笑)」
— 松村ゼミの皆さん、ありがとうございました!いろんな意見がありましたけど、堤さんはどう思われましたか?
商店街にも興味を持ってくれていて嬉しいですね。さっきもアイデアを言ってくれましたけど、「やりたい」と言ってくれたことに対して、アカンって言わないと決めてるんです。あ、1個だけほんまに「それは無理」って言ったんは、商店街の真ん中で温泉掘りたいっていうアイデア。阪大生は「絶対温泉湧きます」言うてたけどね。
— これまでにやって良かったと思うイベントや出来事ってありますか?
いっぱいありますね。まずはタローパンをリニューアルした時に、阪大で建築を学んでいた学生さんが内装を設計してくれたこと。壁も机も全部、阪大生の皆が手伝ってくれたんです。
それから、ここで結婚式もやりました。阪大を卒業して、地方で働くから早く結婚式を挙げたいんだけど、お金がないからタローパンでやりたいって言ってくれた卒業生がいて。
— ここで結婚式!?
僕が神父になりきってね。新郎新婦のご家族も来られていて、僕が本物の神父やと勘違いしてはったみたい(笑)。「違いますよ、パン屋です」って言いましたけどね。披露宴の料理も、商店街の皆がつくってくれたり、和菓子屋さんがまんじゅうでケーキカット用のスイーツを用意してくれたり。式は大成功で、ご家族も号泣されていましたね。
— とても素敵なエピソードですね。
あとは、「石橋卒業式」というのもやりました。阪大の卒業式の前に、商店街と関わりの深い学生に集まってもらって、商店街の人と一緒に卒業式をしたんです。最初は、いつもみたいにふざけようと思ってたけど、最後くらいちゃんとしようと思ってね。一人ひとりに卒業証書を用意して、僕が校長先生の役をして。そしたら、学生が泣いてくれるんですよ。僕もあんなに感動するイベントになると思ってなかった。
— お話を聞いているこちらも、涙が込み上げてきます…!

僕も幼い頃、阪大生にお世話になったから。阪大生は皆、ほんまええ子らばっかり。

— こうしてお話を伺っていると、阪大生と会わない日はないんじゃないかというくらい、阪大生とのつながりがあって、阪大とコラボしていろんなプロジェクトに取り組まれていることを知りました。堤さんは商店会の取り組みや、パン屋の店主としてもお忙しいかと思うのですが、こんなにも阪大生と深く関わる理由って何でしょうか?
まあ、阪大生ってええやつばっかりなんですよ。僕自身も昔は阪大でよく遊んでいて、皆めちゃくちゃ優しくてええやつばっかり。嫌やなと思う人が一人もいなかったんですね。阪大に通ってるくらいだから頭も良いと思うんですけど、僕みたいな庶民とも付き合ってくれるし(笑)。
— 庶民って(笑)。
はじめは商店街を盛り上げるために動き始めたから、「こんなことして意味ある?」っていうこともあったけど、やっぱり阪大生が好きなんやと思うんです。商店街の皆ね。一緒にイベントするのも楽しいし。まあ、阪大生に遊んでもらってるだけなんですけどね。
— 堤さんの行動の背景には、阪大生への愛があるんですね。
僕にも娘が2人いまして、最近は2人とも相手してくれないけど、阪大生の皆が相手してくれるから、寂しくない(笑)。それに、阪大は地方から来てる学生も多いから、個人的に相談にのることも多いんです。生活面のことや、恋愛相談にものったことがありますよ。僕の人生のすべての知識をふりしぼって答えています(笑)。あとは、「就活で内定をもらったんだけど、親が内定先に納得してくれないから、一緒に家まで来て説得してくれ」って頼まれたこともありました。
— なんか、第2の親みたいですね…
その子の実家には行かなかったけど、電話で親御さんとお話して、納得してもらいました。
— 納得してもらってる!!(笑)
そんな感じで、学生の相談にのっていると、それが親御さんにも伝わって、お土産を持って挨拶に来られることもあるんです。僕自身は親御さんにどう思われているのか心配だけど、同じくらいの年齢だから、安心してもらえるのかもしれませんね。
— それにしても、なぜ堤さんに個人的な相談も集まってくるんでしょう?
たぶん阪大生の誰かが、「何かあれば堤さんに言ったらなんとかなる」って、言ってまわってるんでしょうね。まあ、商店街として、なんとかします。

大学も、就活も、プライベートも、商店街のことでも。なんかあったら、いつでも声かけてや!

— 阪大生にとって、堤さんや商店街の皆さんは、とても心強い存在だと思います。石橋で日常を過ごす阪大生や新入生の皆さんに、メッセージをお願いします!
大学生活で困ったことがあったり、商店街でやりたいことがあったら、いつでも声をかけてください。僕に分かることであれば何でも答えるし、商店街も協力できるし、よほどの無理がないかぎり、誘われたことはやります!
— パン屋さんだということ、本当に忘れそうです。
特に新入生の皆さんは、慣れない環境で緊張するかもしれないけれど、「何か分からないことがあれば聞いてください」という紙をお店にも貼ってますから、遠慮せずに声をかけてくださいね。一緒に大学生活を楽しみましょう!
— 石橋商店街は、阪大生の強い味方ですね。ありがとうございました!

 

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