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6月書評対決:阪大生協「書籍shop」[本に込めた情熱を見よ!]

2019.06.06
 ブックコレクション
阪大生協「書籍shop」
阪大生協「書籍shop」

中原中也詩集

中原中也 著

ISBN:9784101290218 | 出版社:新潮社 | 本体価格:550円

 今回ご紹介するのは30歳でこの世を去った中原中也の詩集です。
中原中也は大正末期から昭和初期に活動した詩人で、その詩は若い感性に包まれた言葉とスタイルで若者たちの心を今も虜にしています。
中也の詩で好きなのは”汚れっちまった悲しみに……”や”生い立ちの歌”などがあるが、
やはり ゆあーん ゆよーんの”サーカス”が一番好きです。

みなさんはサーカスと聞いて何を思いますか。私は昔見たサーカスの印象が頭から離れません。それはフェリーニの映画のように人間味と美しさに満ちており、ショスタコーヴィチ の音楽ワルツ2番が延々と流れている。そんな哀愁に満ちたサーカスが浮かびます。 中也のサーカスは私が思い描くサーカスそのものです。

 大正末期の時代、詩人の心の中に過ぎ去りしセピア色の風景と共に現れたサーカス小屋。 見えるともないブランコに、ブランコ乗りとなった詩人が戯けて鰯(いわし)となった観客をからかう。そこに聞こえるブランコの音。

”ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん “

この空中ブランコの揺れを見事に表現したオノマトペ。哀愁の響きに満ち溢れている。

  再び外へと出て落下傘のイメージのサーカス小屋を見つめる。 小屋の中の騒々しさと、真っ暗闇の外の世界。落下傘で落ちていく不安定な自分の姿が闇の中に浮かび上がり消えて行く。詩人の見つめる先は郷愁(ノスタルヂア)へとそそがれてゆく。
相米慎二の「雪の断章 情熱」で主演の女優が「サーカス」の詩を朗読するシーンがあった。
”ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん“と移ろい行く心の表情を表していたっけ。

みなさんも一緒に中也のサーカスに行きませんか。

( 評者:工学部書籍 松尾達夫 )


大人の語彙力大全

齋藤孝(教育学) 著

ISBN:9784046021069 | 出版社:KADOKAWA | 本体価格:840円

目上の方に送るメールを送る時、
「今日から頑張ります」
いや、このままだと少し、子供っぽいかな?
なんて言葉にすればいいんだろう・・・

「スキームを作って」「コンセンサスを得る」って先輩言っていたけど、
スキーム?コンセンサス?なんだそれ。
こんなことありませんか?
少し言い換えてみます。
「本日より尽力いたします」「計画作って」「合意を得る」

このようにさっと使えるように、理解できるようになりたくないですか。
え?使えるようになりたい?
そうでしょう、そうでしょう。使えるようになりたいでしょう!
そんなあなたにオススメする1冊です。

本を読むのが苦手な人でも辞書みたいなので、必要なところだけ読むこともできます。
物語もないので、手が空いた時にパラパラと気軽に眺めていてもいいと思います。
この本の中には普段から使える言葉からビジネスで使える用語、使っているとかっこいい(笑)になるような言葉まで簡単な解説付きで載っているので、楽しく語彙力アップができると思います。

年齢が上がるにつれて、言葉を選んで文章を作ることが増えていきます。
文だけでやりとりをするメールや手紙ではニュアンスが伝わらないことが多々あります。
そういうときに、様々な言葉を使いこなすことができれば、より的確に物事を伝えることができると思います。
スマホで一つずつ検索するよりも簡単に語彙力アップができるので、是非一度使ってみてください。

( 評者:箕面店 奥村大地 )


武士の家計簿

磯田道史 著

ISBN:9784106100055 | 出版社:新潮社 | 本体価格:760円

 本書で注目されている、猪山家は加賀藩の御算用者、つまり会計処理の専門家であり、経理のプロ集団であるといってよい。加賀百万石といえども、幕末の頃の財政は逼迫していた。しかも将軍の娘と縁組することとなり、何かと出費が嵩む。その大奥の財政担当になることで猪山家は出世のチャンスを掴み、加増を得る。しかし家計は火の車、過剰債務状態に陥り破産寸前。やむなく借金の整理を試みる。猪山家の家計簿が始まるきっかけとなった。

なぜ、武士の家計が赤字になるのか。いかに節約をしても祝儀交際費が多すぎたのである。しかし武士身分の維持のためには必要な出費であったため削ることはできなかった。
明治になって士族が廃止されて大きな反発がなかったのはそれが一因であろう。
さもありなんといった感じである。
明治維新後は海軍の主計(経理)担当を任される。海軍といえば近代の金喰い虫である。その金喰い虫のおかげで御算用者が必要になったというのが面白い。
芸は身を助ける。これこそ現代人が学ぶべき教訓といえる。

( 評者:豊中書籍 山崎晃史 )


きっと明日はいい日になる

田口久人 著

ISBN:9784569841359 | 出版社:PHP研究所 | 本体価格:1,250円

 4月から新しい環境、新しい人間関係の中でスタートを切った方、そろそろ張り詰めていた気持ちが緩み、こころが疲れたと感じてはいませんか?
まわりのみんなは楽しそうで自分一人が取り残されたように感じたり、自分が思い描いていた生活とは違ったと、戸惑ってはいませんか?
そんな時は、無理をして前向きになろうとしないで、今の自分を認めてあげることが大切だと著者は書いています。

この本の言葉で心が楽になり、前向きになる考え方ができるようになれるかもしれません。
すべてを読まなくてもいいのです。パラパラとめくってみて、気になるものを読んでみてください。あなたのこころにストンとはまる言葉がこの本の中にきっとあります。

頑張っているのにうまくいかなくて、落ち込んでしまう…、そんな時にこそ読んでほしい言葉があつめられた本です。
きっとあなたの中の何かがかわるでしょう。

あなたに幸せな日々が訪れますように。

( 評者:本部前店 江草明子 )


神は銃弾

ボストン・テラン 著

ISBN:9784167527853 | 出版社: 文藝春秋 | 本体価格:900円

 年に幾日かはジム・トンプスンやジェイムズ・エルロイのような真っ黒けっけのノワールに没頭して意識的に現実逃避します。単に浮世から頭を切り離したいのに映画だと受け身すぎて楽すぎて没頭しきれないのですが、ノワール小説は想像力をギンギンに刺激してきて没入を強要してきます。暴力やドラッグなど私にとって非日常過ぎるストーリーが無い物ねだり的な憧れとなって胸に迫るようです。
 本書はカルト集団に娘をさらわれた父親が元カルトの女性ケイスと共に娘奪回に命をかけるというありがちなお話ですが、このヒロインのケイスがとてつもなくカッコイイ女性で過剰すぎる比喩表現や饒舌なセリフまわしも全てケイスを引き立てる装置となっていて血の気の多さも鼻につかない。
 再読中から昔見た映画で私的イイ女であるところのジーナ・ローランズやローレン・バコールがたまらなく懐かしくなってきて「キーラーゴ」をレンタルするため走りました。

( 評者:医学部店 泉原真 )


阪大生協「書籍shop」

大阪大学生協において教科書・専門書・一般書・雑誌等の書籍販売と書籍の公費購入を扱っています。豊中店、工学部店、医学部店、本部前店、箕面店、歯学部店の6店舗で構成されており、一般書籍店舗とは異なり、例外的に値引き販売が認められており、組合員への福利厚生サービスに努めています。

(2019年6月対決分)

ブックコレクションは教員VS学生団体の書評対決企画です。

本があるのは…

  • 生協 豊中書籍ショップ
  • 生協 医学部書籍ショップ
  • 生協 本部前店・工学部書籍ショップ(センテラス2F)
  • 生協 箕面キャンパスショップ シャンティ
  • 附属図書館・総合図書館(豊中)・理工学図書館(吹田)

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