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新入生が期待しているコト、いまむかし。{入学時アンケート2017&2020の結果から}

2020.09.25
 HERレポート
高等教育・入試研究開発センターの和嶋です。

前回、「訳あって今は金髪です」と自己紹介させていただきましたが、現在は、シルバーにしてみました。(さらに近づき難くなってしまったでしょうか...)

阪大生の皆さんにご協力いただいたアンケートや学内にある教育に関するデータについて、その分析結果をご紹介するのが、「Handai Education Review レポート(HER レポート)」です。
今回は第二回目。新入生が阪大に期待していることについて、今年2020年度の新入生と、3年前の2017年度新入生のそれぞれの入学時アンケートで比較してみたいと思います。
前回、2020年度の新入生が阪大で最も伸ばしたいと思う能力※1の1位は「分析的・批判的思考力(クリティカルシンキング)」(19.7%)、2位は「外国語能力」(17.7%)、3位は「明瞭かつ効果的に話す能力」(12.4%)であったことをご紹介しました。

それでは、3年前の新入生、つまり現在の4年生は、何に期待して入学していたのでしょうか?

2017年度の新入生1位は、「外国語能力」(24.2%)、2位は、「コミュニケーション能力」(18.8%)、3位は、「プレゼンテーション能力」(11.9%)となっていました。
外国語能力」は2017年度が1位、2020年度も2位と、今も昔も、阪大新入生が伸ばしたいと思っている能力であったことがわかります。一方、2017年度は上位だった「コミュニケーション能力」、「プレゼンテーション能力」は2020年度はそれぞれ4位、6位となっており、それに変わって2020年度では「分析的・批判的思考力(クリティカルシンキング)」、「明瞭かつ効果的に話す能力」が上位になっています(下図)。

2017年度上位の「コミュニケーション能力」、「プレゼンテーション能力」と2020年度上位「明瞭かつ効果的に話す能力」は、”他人に伝える、他人と話す”という共通点があると思いますが、2020年度の新入生の方が、より”効果的に伝える”ということを意識しているということかな、と。

分析的・批判的思考力(クリティカルシンキング)」について、2017年度の4位から2020年度に1位にアップしたのは、高校での探究学習の充実化の影響があるかもしれません。
AIをはじめとした社会を構成する基盤技術の急速な発展、社会課題の複雑化などにより、与えられた課題を解決する能力よりも、課題を自ら見つけ解決していく能力が重要になってくる(なっている)と言われています。そのため、高校教育段階から、課題発見と解決の経験を積んでおくために、探究学習の充実化の方針が立てられました。課題を自ら見つけるためのプロセスに、状況を深く掘り下げる「分析的・批判的思考力(クリティカルシンキング)」が重要であるということを2020年度新入生は高校時代に体感してきているのではないでしょうか。

高校で学んできたことって、学年が少し違えば結構変化があるみたいです。

社会の諸課題を解決していくには、問題を明確化し、解決のために必要な様々な分野の知識・技術を持つ人材と協働していく、まさに阪大が掲げている”共創”のプロセスが必要となってきます。そのためには、専門知識はもちろんのこと、問題を的確に捉えるための「分析的・批判的思考力(クリティカルシンキング)」様々な人材を巻き込んでいくための「明瞭かつ効果的に話す能力」はとても重要な能力になります。2020年度新入生は、より強くそれらの能力の大切さを感じているのかもしれません。
ちなみに、阪大の学部卒業生を雇用したことがある(一緒に働いたことがある)方達からの評価では※2(下図)、最も評価されている能力は、「分析的・批判的思考力(クリティカルシンキング)」となっており、2020年度新入生が最も伸ばしたい能力が、企業内で評価されていることがわかります。この結果を見れば、安心して阪大の教育を受けられるのではと思います。

今の4年生も、これまで受けてきた阪大の教育で「分析的・批判的思考力(クリティカルシンキング)」が養われているということだと思いますので、ご安心(?)を。

一方、評価されている2位は「学術的な教材を読み、理解する能力」、3位は「明瞭かつ効果的に書く能力」となっています。2020年度新入生が期待する「外国語能力」、「明瞭かつ効果的に話す能力」はそれぞれ8位、4位となっていました。企業から見ると、”口頭のコミュニケーション”よりも、”読んだり書いたり”が評価されていることがわかります。とは言え、全体的には高い評価をいただいているようです。

コロナ渦の中、オンラインでの活動が多くなった結果、気軽に海外の方とコミュニケーションが取れる状況となり、より世界が小さくなったと感じています。自動翻訳の精度も年々上がってきていますが、まだ、「ほんやくコンニャク」レベルではありませんので、ぜひ在学中に「外国語能力」の向上もがんばっていただいて、小さくなった世界で活躍していただけるとうれしいなぁ、と思っています。


※1: 国際的な研究大学で実施されている学生調査「研究大学における“学び”の調査(SERU:Student Experience in the Research University)」にて取り上げられている能力。^戻る


※2: 大阪大学卒業生・修了生アンケートの結果。現在の所属(企業、団体等)の立場から、大阪大学の卒業生・修了生に対する評価を行ってもらった(実施時期:2018 年11 月~2019 年3 月)。^戻る

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