
この世には、いろんな「〇〇マニア」が存在します。鉄道、グルメ、ファッション、植物などなど、いくつものマニアがある中で、「トイレマニア」の存在を聞いたことはあるでしょうか。実は、阪大に「トイレマニア」の集団がいるんです。それが、『大阪大学トイレ研究会』。今回は、代表の巖西(いわにし)さん(経済学部/3回生)と、メンバーの夏目さん(外国語学部/2回生)のおふたりに取材。研究会の誕生ストーリーから、活動内容、阪大のトイレ事情など、トイレへの想いを語ってもらいました。
『大阪大学トイレ研究会』
●ツイッター
@handaitoilet
●ホームページ
http://handaitoilet.wp.xdomain.jp/
『大阪大学トイレ研究会』
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@handaitoilet
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「ウォシュレットの機能に感動しちゃって!笑」
トイレへの興味は、大学の試験がきっかけだった。
— 巖西さん、夏目さん、今日はよろしくお願いいたします。夏目さんは、『再履バス同好会』の取材にもご登場いただいていましたね(mappa! Vol.4)。まさか、今回もお話を聞かせてもらえるとは思ってもみませんでした(笑)。ほかのメンバーさんはいないんですか?
巖西さん:夏目さんは、2018年の大学祭からメンバーに参加してくれたんです。メンバーは全員で15名いるのですが、コアメンバーは6名くらい。夏目さんがメンバーになってくれて助かっています。
夏目さん:僕も軽い気持ちでブースのお手伝いをしていただけなので、まさかメンバーになるとは思ってもみませんでしたよ(笑)。
夏目さん:僕も軽い気持ちでブースのお手伝いをしていただけなので、まさかメンバーになるとは思ってもみませんでしたよ(笑)。

— 今日は『大阪大学トイレ研究会』として、お話を聞かせてください。では早速ですが、研究会が生まれたきっかけは何ですか?
巖西さん:僕自身トイレが好きなので、2回生の時にトイレに関する情報を発信するためのツイッターアカウントをつくったんです。それが研究会のはじまりですね。
— トイレが好きだという人に初めて出会いました(笑)。いつからトイレが好きになったんですか?
巖西さん:昔から、便器のカタチがふんわりと好きだったんですよ。小学生の時に、どうぶつの森というゲームで、トイレだらけの家をつくってたくらい(笑)。小学生の頃から、なんとなくトイレに惹かれていたんでしょうね。
— 小学生か〜。それからずっと好きというのもすごいですね。
巖西さん:積極的に好きになったのは大学入試の時です。京都大学の2次試験で、数学の試験中にお腹が痛くなってトイレに駆け込んだんですよね。ふと、ウォシュレット(※「ウォシュレット」はTOTOの登録商標です)のボタンに目を向けたら、「前後ボタン」があったんですよ。ウォシュレットの「前後ボタン」を見たのは人生初めてで、試しに押してみたんですよね。そしたら、「うわ!めっちゃ動く何これ!」って、機能に感動しちゃって(笑)。まあ、京大は落ちたんですけど。
— 入試の真っ最中に何やってるんですか(笑)。その時の感動が、トイレへの興味につながったというわけですね。
巖西さん:そうなんです。阪大に入学してから、阪大のトイレにはどんな機能があるのかを調べたり、トイレオタク界隈の情報をチェックするようになりました。だからはじめは、僕自身の興味でアカウントをつくったので、メンバーを増やそうとも思っていませんでした。
— なぜ、ツイッターで発信しようと思ったんですか?
巖西さん:ネットで有名な、ヨッピーというライターさんの影響ですかね。その方の記事に「自分の趣味や好きなことは発信しなさい」と書いてあって。それで、僕も発信してみようと思ったんです。はじめは1人でちょこちょこ発信していたんですけど、友人に活動の話をしたら興味を持ってくれる人もいて。そこから少しずつメンバーが増えていきました。
夏目さん:僕は大学祭の時に、人手が足りないからと言われてブースを手伝いに行ったんですよ。それがきっかけで、メンバーになっちゃいました(笑)。お腹が痛くなりやすいから、トイレは快適なほうが嬉しいし、「阪大のトイレ環境を良くしたい」っていう『大阪大学トイレ研究会』の考えに賛同したんです。
夏目さん:僕は大学祭の時に、人手が足りないからと言われてブースを手伝いに行ったんですよ。それがきっかけで、メンバーになっちゃいました(笑)。お腹が痛くなりやすいから、トイレは快適なほうが嬉しいし、「阪大のトイレ環境を良くしたい」っていう『大阪大学トイレ研究会』の考えに賛同したんです。

— マニア的に、阪大のトイレはおもしろくない!?
— 誕生ストーリーを伺ったところで、活動内容を教えてもらえますか?
巖西さん:はじめはトイレを調査してデータにまとめたりしていたのですが、阪大のトイレがおもしろくなくて辞めちゃいました(笑)。だから、今は定期的に集まって活動していることはないんですが、まちかね祭でトイレを展示したり、『Let’s BEnjoy』という情報誌を作成したり、阪大のトイレの課題や解決策について話し合ったりしています。
— いろいろツッコミたくなるお話が出てきたのですが、ひとつずつ聞いていきますね(笑)。まず、阪大のトイレがおもしろくないというのは、どういうことですか?阪大のトイレには何の特徴もないのでしょうか?
巖西さん:阪大の特徴としては、和式トイレが多いことでしょうか。珍しい色や、変わった形をした便器のトイレがあればおもしろいんですが、阪大のトイレはわりとどこも同じ便器で代わり映えが無くて…例えば、小便器はUS800系ばかりですし。だからつまらなくなってしまって…。
— 「US800系」って何ですか?
巖西さん:トイレの型番です。これはパブリックによく置いてあるタイプの便器でして。僕好みのトイレは、阪大にはなかったですね。
— なんだかちょっと寂しいですね。ちなみに、どんなトイレがお好みなんですか?
巖西さん:珍しい色や形のトイレとか、旧型のロゴマークがついていたりするとうれしくなりますね。たとえばTOTOは、1969年まで「TOYOTOKI」という商標で表記していたんです。特に、ワシのマークがついた「TOYOTOKI」が書いてあったら、トイレオタクは喜びますよ〜ほんとに。
— さすが、詳しいですね!出会ってみたいです(笑)
それと最近、感動したのは池田市役所のトイレ。あそこはすごいですよ。階ごとに、型番の異なるトイレが置かれているんです。一つひとつが珍しい便器で、あれは良かったですね〜。阪大からも近いし。たまりません。

— 日常的に、トイレに着目していらっしゃるんですね(笑)。では次に、まちかね祭の展示はどのようなことをされたんですか?
巖西さん:ご覧になられた方もいらっしゃるかもしれませんが、2018年11月のまちかね祭ではこのような展示をしました。

— なんだこれは!トイレがぽつんと置いてある、とてもシュールな展示ですね。
巖西さん:これは苦労したんですよ〜。はじめは、LIXILの「シースルートイレ」という珍しいトイレを展示しようと思ったんです。これは、見た目はふつうの仮設トイレなんですけど、中に入るとマジックミラーになっていて、外が丸見えなんです。
— よくぞ、こんなトイレがあるということをご存知でしたね。
巖西さん:ツイッターをやっていると、そういう情報が入ってくるんですよ。これは、野外で排泄をしている発展途上国の生活を体験できるようにつくられたもので、ぜひ阪大で展示したいと思い、LIXILさんにお貸しいただけないかメールをしました。でも断られてしまって。それでも諦められなくて、企画書を作って再度交渉の電話をしたんですよ。企画書は読んでもらえたのですが、輸送面と安全面の理由から、実現には至りませんでした。
— 残念ですけど、企画書を作成して交渉された行動力はすごいですね。じゃあ、この便器はどうやって用意したんですか?
巖西さん:ヤフーオークションで買いました。2万円くらいだったと思います。
— 便器がオークションに出品されているとは知りませんでした!自ら便器を買ってまで、トイレを展示したかったんですね。
巖西さん:重さが数十kgもあるので阪大坂を上るのがめちゃくちゃしんどかったんですけど、シンプルにおもしろいなと思って。『Let’s BEnjoy』も、大学祭に向けて作成したものなんです。これはメンバーみんなで手分けして書きました。トイレにまつわる豆知識やエッセイ、『再履バス同好会』さんとの対談レポートなどを掲載しています。

— できたてほやほやの学生サークルさんが作ったとは思えないほど、完成度の高い冊子ですね!知られざるトイレの魅力も知れるし、クスっと笑える話もあるし。全20ページ、本当にほぼトイレの話題しか載ってないのに、読み応えたっぷりですね〜。
巖西さん:ありがとうございます。ちなみに…めちゃくちゃ大変だったんですけど、冊子のデザインは、2週間かけてすべて僕が作りました。正直やりたくはなかったんですけど(笑)、実行委員会には出すって言っちゃってるし、僕が代表だし、やるしかないなーって。まちかね祭のブースでは、この冊子と、LIXILさんからお借りした「SATO」を合わせて展示したんです。
— この青い便器が「SATO」ですか?
巖西さん:そうです。これはLIXILが開発した発展途上国向けの簡易式トイレでして、この便器の中に、冊子のお代金を入れていただくようにしました。冊子や展示を見て研究会に興味を持ってくださる人も増えて、徹夜しまくった努力が報われましたよ…。
夏目さん:あれは良かったですよね。「SATO」の仕組みについても分かってもらえましたし。まあ僕は当時、『大阪大学トイレ研究会』の正規メンバーじゃないのに手伝っていたんですけどね(笑)。
夏目さん:あれは良かったですよね。「SATO」の仕組みについても分かってもらえましたし。まあ僕は当時、『大阪大学トイレ研究会』の正規メンバーじゃないのに手伝っていたんですけどね(笑)。
— おふたりともすごいなあ。本当に好きじゃないと、なかなかできないかも。では最後に、阪大のトイレの課題や解決策については、どのような活動をされているんですか?
巖西さん:ツイッターアカウントをつくったのは、トイレに関する情報を発信するためだとお話しましたが、最近はフォロワーの方から意見をもらうことが増えてきまして。
例えば、「〇〇館のトイレが故障している」「トイレの石鹸がきれている」とか。なんで僕に言うねんって感じなんですけどね(笑)。
例えば、「〇〇館のトイレが故障している」「トイレの石鹸がきれている」とか。なんで僕に言うねんって感じなんですけどね(笑)。
— たしかに、僕らに言われてもって感じですよね。
巖西さん:僕らがトイレを管理している訳ではないので、トイレを直せるわけではないし、掃除もすることはないんですけど、あまりにも情報がくるもんだから、これはやるしかないと思って。ツイッターで、200名ほどの方に、阪大のトイレの満足度調査を行ったんです。そうすると、改善を求める声があまりにも多くて、これはなんとかしないといけないと思いました。そこで、トイレの課題と解決策について話し合う「第1回トイレ会談」を2019年1月に開きました。

— 教員の方も来られたということですが、これは巖西さんがお声がけをして開催されたんですか?
巖西さん:いえ、実は中村征樹先生からお声がけいただいたんです。僕たちのツイッターアカウントを見つけて興味を持ってくださって、「何かやろうよ」って。このような会を開催できて、とてもうれしかったですね。
「阪大の先生って、学生と距離がとても近い。やりたいことを後押ししてくれる、実現できる環境だと思います。」
— 開催のきっかけは先生からのお声がけだったんですね。でもよく、研究会のアカウントを発見されましたよね(笑)。
巖西さん:本当に。でも、阪大の先生方は学生との距離が近くて、先生のほうから気にかけてくださるんです。僕たちみたいに、ちょっと珍しい活動をしていると、すぐに見つけてくれて、活動を後押ししてくださるんですよね。
夏目さん:『再履バス同好会』の活動でも、とてもお世話になっています。
巖西さん:だから、何かやってみたい、挑戦してみたいと思う人にとっては、阪大って良い環境だと思うんですよね。先生のほうから歩み寄って、サポートしてくださるので。
夏目さん:『再履バス同好会』の活動でも、とてもお世話になっています。
巖西さん:だから、何かやってみたい、挑戦してみたいと思う人にとっては、阪大って良い環境だと思うんですよね。先生のほうから歩み寄って、サポートしてくださるので。

「気負うことなく、自分の心のおもむくままにやってみること。コツコツと、地道に発信し続けていたら、きっと何かにつながるから。」
— 先生からのサポートがあるとはいえ、好きなことを形にして発信したり、行動するのはすごいことだと思います。
巖西さん:活動のことをお話していると、「アツい人だな」って思われるかもしれませんが、僕自身は「やってやるぞ!」と熱烈な気持ちで取り組んだことは一度もないんです(笑)。「やってみよっかな〜」くらいの、ふんわりした想いでツイッターを始めてみたら、流れるように、今に行き着いただけ。でもツイッターだって、始めの半年くらいは何も反応がなかったんですよ。コツコツと発信していたら、誰かに気づいてもらえて、興味を持ってくれる人が増えてきた。時間はかかったけど、発信し続けていれば、何かにつながると思うんです。
夏目さん:情報発信をしてみると、きっと、先生がフォローしてくれるから(笑)。あとは、巖西さんもおっしゃるように、コツコツと発信し続けること。阪大でせっかくおもしろい活動をしているのに、ツイッターアカウントだけつくって、すぐに放置している団体を見かけると、もったいないなと思います。
巖西さん:そうですね、続けることが大事。僕も、こんなに研究会が大きくなるとは思ってなかったですよ。自分の好きなことを、続けてみたら良いと思います。
夏目さん:情報発信をしてみると、きっと、先生がフォローしてくれるから(笑)。あとは、巖西さんもおっしゃるように、コツコツと発信し続けること。阪大でせっかくおもしろい活動をしているのに、ツイッターアカウントだけつくって、すぐに放置している団体を見かけると、もったいないなと思います。
巖西さん:そうですね、続けることが大事。僕も、こんなに研究会が大きくなるとは思ってなかったですよ。自分の好きなことを、続けてみたら良いと思います。

トイレマニア、そして阪大のトイレの未来は…?
— トイレがお好きということは、やはり将来はトイレ関連の職に就かれるんですか?
巖西さん:トイレメーカーのインターンシップにも参加したのですが、好きなことを仕事にするのは違うかもな〜と思っています。もう4回生になるので、将来のことを考えないとだめなんですが、どうしようかなあ…。
— ちなみに、トイレ以外にお好きなことってありますか?
巖西さん:僕はもともと、入学したての頃は軽音サークルに所属していたんですよ。高校の時からギターをやっていまして。音楽もマニアックではあったんですが、トイレのほうに興味がいっちゃいました(笑)。あとは、駅前の商店街でお花屋さんのバイトをしています。
— なにそのギャップ!!すごくほっこりしますね(笑)。
巖西さん:だからほんとに、僕はアツい系ではないんですよ。締切も、いつもぎりぎりだし、のらりくらりしちゃうタイプ。でも、僕も来年には大学を卒業しますし、研究会や阪大のトイレの未来をしっかり考えないとって、思っています。トイレは大学の設備ですから、環境を良くすると言っても、すぐに改善できることではありません。僕たちだけで、解決できることでもないので。

— 阪大のトイレを良くするために、具体的に動き出していることはありますか?
巖西さん:先日、トイレのリニューアルに向けて、阪大の職員さんと企業の方々との意見交換の場に参加させていただきました。学生目線で、トイレの課題や要望をお伝えして、改良に向けて動き出しているところです。
夏目さん:僕は特に、トイレに石鹸を設置する活動を進めていきたいです。石鹸は僕自身も困ることが何度もあったので…。
夏目さん:僕は特に、トイレに石鹸を設置する活動を進めていきたいです。石鹸は僕自身も困ることが何度もあったので…。
— そもそも、良いトイレってどんなトイレなんでしょうね?
巖西さん:それは、先日の「トイレ会談」以降、より考えるようになりました。僕は、新型のきれいなトイレを導入することが、トイレの環境を良くすることではないと思います。きちんと手入れをして、長く使われていくのが理想じゃないかって。和式を洋式に変えるのは良いと思いますが、まだ使える便器を新しくきれいなものに買い替える必要はないなと。

巖西さん:あとは、やはり研究会のメンバーを増やしたいです。長期的なプロジェクトですから、毎年、新陳代謝していくような組織や仕組みづくりが必要ですね。一緒にトイレの未来を考えたり、プロジェクトに参加したりすることを通じて、自分たちが過ごす大学を、より良くしたいと思っている人にぜひコアメンバーとして来ていただきたいですね。
— 自分たちの大学を、自分たちで良くしていく。素敵な活動ですよね。
学外に目を向けたボランティアサークルってたくさんあるけど、学内の環境を良くしようというサークルはほとんどないと思います。外をやる前に、まずは中じゃない?って、個人的には思うんですよね。阪大生のみなさん、そして自分たちにとって、気持ち良い大学をつくっていきたいです。
